土肥教授

土肥教授

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日本の医学史の中で救急医学という学問が体系的に行われるようになったのはごく最近のことで、新しい医学といえます。その一方で救急医学は目の前にいる苦しむ患者に対して担当科や臓器など関係なく手を差しのべる、まさに“医の原点“ともいえる医学でもあります。昭和大学救急医学講座は初代教授である有賀 徹先生(現名誉教授)の下で1997年に設立され、昭和大学藤が丘病院に続いて昭和大学で2つ目の救命救急センターとして認可されました。この度、私は有賀前教授の退官に伴いまして2016年8月より後任として第2代主任教授として就任いたしました。

2011年(平成23年)3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災は日本人の根幹的な考えをも変えました。昭和大学でも明日にも起こるかもしれない災害に対応するため2017年1月1日より新たに講座名に災害が加わり、救急・災害医学講座として新たなスタートを切りました。災害拠点病院としての使命を果たすこと、昭和大学DMAT teamとして災害医療に対応すること、地域そして日本のみならず世界の災害医学の発展に貢献するために努力していく所存です。

昭和大学には東京都と神奈川県に9附属病院を有しております。そのうち4病院(全約2400床)でそれぞれの地域に根づいた救急医療(うち2病院は救命救急センター)を展開しています。昭和大学病院は東京の城南地区を中心とした地域救急医療を担う基幹病院で、一次二次救急に加えて品川区では唯一の救命救急センターを有しています。災害時は災害拠点病院として城南地区の医療機関の要としての役割を担っています。このような重責を担った病院において各診療科やすべてのスタッフと連携し協力を仰ぎながら質の高い救急医療を展開していきます。また、大学の地域における役割の重要性は増しています。昭和大学救急医学講座では各附属病院が位置する地域自治体、地域住民、地域医師会、地域医療機関と密接に連携し、昭和大学の地域への貢献における救急医の使命を果たしていきたいと考えています。

近年の救急医の役割は救急診療や災害医療のみならず、集中治療医学、病院前救護、医療スタッフや一般市民向けへの教育などと拡大しています。さらに地域医療機関や行政機関と密接に連絡を取り合い地域救急を展開して行くことが重要です。そういった意味において救急医は地域医療全体のネットワークのハブとなり働くことが必要だと思っています。また、次世代の日本の救急医が世界のフロントランナーとして活躍していくために優れた臨床医であり且つ世界に貢献する研究者である未来の救急医の育成のために前に進んでいく所存です。是非とも昭和大学救急医学講座をご指導ご支援賜りたくお願い申し上げます。

昭和大学 医学部 救急・災害医学講座
講座主任(教授) 土肥謙二

履歴書

 
  • 昭和6104月 昭和大学医学部 入学
  • 平成0403月 同上      卒業
  • 平成0405月 第86回医師国家試験 合格
  • 平成0405月 昭和大学脳神経外科学教室 入局
  • 平成0405月 昭和大学大学院医学研究科 入学
  • 平成0803月 昭和大学大学院医学研究科 修了
  • 平成0504月 西島脳神経外科病院 派遣
  • 平成0604月 国立東京第二病院(現、東京医療センター) 派遣
  • 平成0804月 昭和大学医学部脳神経外科学講座 員外助手
  • 平成0907月 昭和大学医学部脳神経外科学講座 助手
  • 平成1210月 旗の台脳神経外科病院 医員
  • 平成1310月 昭和大学医学部脳神経外科学講座 助手
  • 平成1409月 昭和大学医学部救急医学講座 助手
  • 平成1804月 昭和大学医学部救急医学講座 専任講師(兼医局長)
  • 平成2210月 University of WashingtonSeattle, USA 留学
  • 平成2210月 Visiting associate professor,  Division of Gerontology and Geriatric Medicine, University of Washington, Seattle, USA 
  • 平成2306 昭和大学藤が丘病院救急医学科 専任講師(兼医局長)
  • 平成2509月 東京慈恵会医科大学救急医学講座 講師(兼診療医長)
  • 平成2601月 東京慈恵会医科大学救急医学講座 准教授(兼診療医長) 
  • 平成2601月 昭和大学救急・災害医学講座 主任教授

研究概要

①基礎研究について

神経損傷、神経保護、神経再生を軸とした神経炎症の研究に取り組みました。

1. 海馬における遅発性神経細胞死に関する研究(学位論文)

蘇生後脳症モデルを用い、海馬における遅発性神経細胞死にアポトーシスが関与し、マイクログリアが重要な役割を有することを明らかにしました。

2. 炎症性サイトカインと神経細胞死に関する研究(Reg. Pept 2002, Proc Natl Acad Sci USA 2006 et al)

本研究は、科学研究費補助金による助成を受けて実施し、その成果の一例として、Interleukin-1、Interleukin-6の役割についてマウス脳虚血モデルを用いて解明した実績が挙げられます。

3. 頭部外傷と酸化ストレスの関与の研究(Anioxid Redox Signal 2007,J Neuroinflammation 2010 et al.)

本研究はマイクログリアにおけるフリーラジカル産生と酸化ストレス評価法の開発に取り組みました。そして、研究テーマの一つである遺伝子欠損マウスを用いた研究を遂行するため、神経救急疾患の動物モデル開発にも取り組み、より臨床の病態に近いモデルを用いた心肺停止モデル、脊髄虚血モデル(出血性ショックモデル)を開発しました。

4. 電子スピン共鳴装置を用いた血液におけるフリーラジカル計測法の研究(J Neurotrauma 2006)

基礎研究を臨床研究へ応用し、神経救急疾患における血中フリーラジカル測定を行い、頭部外傷患者におけるフリーラジカル消去剤(エダラボン)の効果を明らかにしました。それまで、臨床における直接的なフリーラジカル測定は不可能であったため、エダラボンの臨床におけるフリーラジカル抑制効果を証明するはじめての報告となり、本研究は、日本脳神経外傷学会にて牧野賞を受賞しました。

5. 脳低温療法による血中酸化ストレスの抑制に関する研究(OxidMed Cell Longev 2013)

脳低温療法によって血中酸化ストレスが抑制されることを報告し、国際脳低温療法シンポジウムにて最優秀演題賞を受賞しました。

6. 水素水の神経保護効果と頭部外傷後のアルツハイマー病の発症抑制効果の研究(Plos One2014)

ワシントン大学(Seattle, USA)に客員准教授として留学した際に取り組み、本研究成果2015年日本酸化ストレス学会学術賞を受賞しました。

②臨床研究について

臨床においては神経保護法の開発として脳低温療法の研究を中心に取り組みました。

1. 神経救急疾患と炎症性サイトカインの役割に関する研究 (Neurology2001,Peptides 2005, Neuropeptides2005)

スタンフォード大学の西野教授(ナルコレプシーの原因蛋白として知られているオレキシンを発見した研究者)と研究に取り組み、様々な神経救急疾患の髄液でオレキシン濃度が低下していることを発見しました。そして、酸化ストレスの制御が神経炎症の抑制と神経保護に大きく関与する可能性に着目し、フリーラジカル研究に着手しました。

2. 経鼻咽頭冷却法による脳温管理法の開発(Acta Neurochir 2006)

ヒトの鼻咽頭を冷やすと脳温が低下することを発見し、生理学的選択的脳温冷却法として発表しました。その方法は一般に広く知られることになり、ヨーロッパ蘇生ガイドラインでもプレホスピタルケアとして使用され、日本でも現在臨床研究が進行しています。

3. シクロオキシゲナーゼ阻害剤(NSAIDs)を用いた薬理学的脳温管理法の開発ActaNeurochr 2006

本研究では積極的脳平温療法と命名し、NSAIDsを用いた脳温管理は臨床応用された治療として世界的に知られています。

受賞歴

 
  • 平成192月 かなえ医薬振興財団 研究助成受賞
  • 平成1910月 国際脳低温療法シンポジウム 優秀演題賞
  • 平成1910月 日本救急医学会 優秀演題賞
  • 平成203月 日本神経外傷学会 牧野賞
  • 平成276月 日本酸化ストレス学会 学術賞

研究費と業績

 
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