【お知らせ】「救急外来診療のフレームワーク」が出版されました!
垂水庸子先生の著書
「救急外来診療のフレームワーク
簡単に帰してはいけない患者
Bounce-back Admission 事例分析の極意」
が出版されました!
以下垂水先生からのメッセージです。
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救急医療というと救命救急(3次救急)をイメージされる方が少なくないと思いますが、実は救急患者さんの約7-8割は1・2次救急であり、日本では救急医だけでなく、総合診療医・内科医・外科医などがその診療を担っています。
1・2次救急で扱う症例のうち、約7割は入院治療を必要とせず、診察終了後に帰宅します。しかしながら、救急外来から帰宅した患者さんの1-5%は、帰宅後に症状・所見が明らかになったり悪化したりすることによって受診後1週間以内に入院に至ることが知られており、この現象を“Short Term Bounce-back Admission(以下BBA)”といいます。
私の父は25年前、ある病院の救急外来を受診した2日後にBBAとなり、受診から1週間後に亡くなりました。当時私は医学生でしたが、この事態の受け止め方がよくわからず、救急外来の担当医に複雑な思いを抱きました。そしてこの経験が、私を1・2次救急医療専門の道へと導き、約20年にわたりBBAの分析を続けるきっかけを与えてくれました。
本書では様々なBBAの事案の考察を通じて、日本の救急外来診療のあるべき姿を検討しています。
救急外来は一般の外来診療とは異なる特殊な環境であり、時間的・人的・物理的制限のある中で、様々な傷病で来院した患者さんの緊急度を判断しながら診療を進め、適切な診断を下すととともに重症度・入院の必要性を判断しなければなりません。さらに、救急外来の忙しさは刻々と変化し、ベストな診療の方法や内容も微妙に変わります。
このため、BBAを完全になくすことは大変に難しいと言わざるを得ませんが、私たち医療従事者は「仕方のなかったこと」としてBBA事案から目を背けるのではなく、1つ1つの事案に丁寧向き合い、次の診療に活かしていくことが大事ではないかと考えています。
また起こりうるBBAを意識し、検査結果の確認体制を設けたり、症状の変化を速やかに察知して再受診してもらえるようにしたりすることで、治療方針の修正が有効なタイミングでの(より早期の)BBAにすることも大変重要です。
本書をご覧になって、私の取り組みに共感し興味を持って下さる方、私の仲間となってくださる方がいらっしゃいましたら、昭和大学病院救急診療科へ是非お知らせください。(ご専門とされる分野や経験年数は問いません。)